op.1

ballet/orchesrta/criticism

指揮者、小泉和裕の言葉(エッセー)

神奈川フィルの「シーズン演奏会のご案内(2017/2018)」という小冊子をみていると、冒頭に掲げられた、小泉和裕(特別客演指揮者)のあいさつに目がとまった。

クラシック音楽は単なるエンターテインメントではありませんので、コンサートホールで聴いて頂く皆様の中に、一人でも人生が変わるほどの体験をされる事を願って全身全霊をかけて演奏いたします」。

彼の演奏には接したことはないけれど、響く言葉だ。

神奈川フィルは、3月に聴いた、川瀬賢太郎(常任指揮者)の指揮する《魔笛》が美しかった。その体験を記した感想で、その4ヶ月前に同じ劇場で聴いた、ムーティウィーン国立歌劇場の《フィガロの結婚》もよかった、と述べた。共にかけがえのない音楽だと感じるのは、〈私〉という、多様な在り方を教えてくれる。「人生が変わる」とは、〈私〉への感じ方が変わることではないだろうか。

クラシックは聴いていてたのしい。でも、確かに「単なるエンターテインメント」とは言い切れない部分がある。聴いているうち、美を感じる〈私〉を(再)発見することがあるからだ。それは、「全身全霊」に他ならない。