op.1

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パリ・オペラ座バレエ《ラ・シルフィード》を観る(ディスク短評)

二月某日、パリ・オペラ座バレエの《ラ・シルフィード》をディスクで観た。ピエール・ラコット版。ラ・シルフィードをオーレリ・デュポン(Aurélie Dupont)、ジェイムズをマチュー・ガニオ(Mathieu Ganio)が踊った。2004年7月収録。ダンサーを中心に感想を述べる。

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デュポンの踊りは厳格に流麗。ふんわりとしたロマンティック・チュチュの頂には、湿り気を帯びた肉体が、厚みをもって、白くなめらかに輝いている。着地する音にさえ品があり、一貫して優雅だった。

ガニオは背も高いのだが、四肢が長い。踊りは端正。細やかなステップも鮮やかだ。キルトからのぞく太腿が、逞しく引き締まっている。ちなみに、この二ヶ月ほど前、彼はエトワールへと昇格した。

エフィーを踊ったのはメラニー・ユレル(Mélanie Hurel)。小柄なバレリーナだ(アリス・ルナヴァンら、娘役のダンサーたちと並ぶと、頭半分小さい)。踊りは造形的だが、空間との有機的連関は比較的低く、硬質なバレエ。そのため、シルフィードの踊りに比べ、生身の人間という感じが強い。

パ・ド・ドゥを踊ったのは、イザベル・シアラヴォラ(Isabelle Ciaravola)とジル・イゾアール(Gil Isoart)。シアラヴォラの踊りは、とても細い腕と有機的な脚との対照が特徴的。イゾアールはかたちをきちんとつくった。 

群舞も粒ぞろいで一体感があった。

演奏は、エルマノ・フロリオ(Ermanno Florio)指揮、パリ・オペラ座管弦楽団(L'Orchestre de l'Opéra National de Paris)。音色はおおむね均質で、音楽の線は造形的。技術も申し分なかった。表現にややぶっきらぼうなところもあったが、芸術的だった。

ひとつの舞台として水準が高く、オペラ座の美を堪能させた。